読書で恋愛力を磨こう!「恋愛小説」の名著・傑作10選

 

「恋愛」とは奥が深いもの。

それぞれにそれぞれの恋愛があり、一人ひとりが深刻な悩みに直面します。
「簡単な解決方法」なんてものは存在しないでしょう。

難しく、真剣に悩む必要があるからこそ、恋愛は素晴しい体験でもあるのです。

そのような難しい「恋愛」の問題を解決する鍵は、女性誌のコラムやウェブ記事ではなく、時代の風雪に耐えた「恋愛小説」の古典にあるのかもしれません。

今回は、「恋愛小説」の名著、傑作を、10作品選んで紹介していきます。

どれも素晴しい芸術作品であり、かつ恋愛の本質的な問題を論じているので、時間のあるときにぜひ読んでみて欲しいです。

三島由紀夫『春の雪』

春の雪―豊饒の海・第一巻 (新潮文庫)

維新の功臣を祖父にもつ侯爵家の若き嫡子松枝清顕と、伯爵家の美貌の令嬢綾倉聡子のついに結ばれることのない恋。矜り高い青年が、〈禁じられた恋〉に生命を賭して求めたものは何であったか?――大正初期の貴族社会を舞台に、破滅へと運命づけられた悲劇的な愛を優雅絢爛たる筆に描く。

「禁じられた恋」の物語です。

産まれた時から貴族であることが約束された、侯爵の息子で主人公である「松枝清顕(まつがえきよあき)」は、美しい美少年で、ぼんやりと物思いにふけり、感情のために生きようとする青年です。

その彼が、あるきっかけから、許されない恋に身を投じることになります。

三島由紀夫の絢爛な文体が、恋というものの、まったく理屈ではない原理を、儚く壮麗に描き出しています。

三島の遺作である『豊饒の海』のひとつにあたり、日本の恋愛小説の中でも珠玉の出来です。

そんじょそこらの「禁じられた恋」ではなく、これ以上ないというくらいの「禁忌」を、恋に結びつけて描いているのです。

バルザック『谷間のゆり』

谷間のゆり (岩波文庫)

不幸な少年時代を送った青年フェリックスは,はるかに年上の伯爵夫人に熱烈な恋心を抱く.夫人はみたされぬ結婚生活に悩みながらも,あくまで母のような,精神的な愛をもって応えようとする.しかしその心の奥底には,はげしい愛欲が秘められていた…….霊肉の相克に苦しむ人間の姿を,非情な筆致で描きだす恋愛小説の古典.

年上の夫人に恋をした貴族青年の物語です。

ナポレオン没後、フランスの復古王政の時代をテーマにして書かれています。
当時のフランスは、教養ある夫人の価値が高いのですね。

それぞれの登場人物の心情が細やかに描写されていて、恋愛というものの機微を、一つ一つ辿っていくような読書体験ができます。

狂おしく純粋な感情のほとばしりと、当時の女性ゆえの貞淑さのせめぎ合いが、映像作品などでは表現できない、文学ならではの官能を醸し出しています。

スタンダール『赤と黒』

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)

製材小屋のせがれとして生れ、父や兄から絶えず虐待され、暗い日々を送るジュリヤン・ソレル。彼は華奢な体つきとデリケートな美貌の持主だが、不屈の強靱な意志を内に秘め、町を支配するブルジョアに対する激しい憎悪の念に燃えていた。僧侶になって出世しようという野心を抱いていたジュリヤンは、たまたま町長レーナル家の家庭教師になり、純真な夫人を誘惑してしまう……。

今だに「スタンダリアン」という熱狂的なファンを持つ、フランスの大作家スタンダールの代表的な作品です。

貧しく、家族から虐待を受け、暗い感情を燻らせていた美しい少年ジュリヤン・ソレルは、僧侶となって成功をおさめます。

ナポレオンを密かに崇拝するほど強烈な野心を持つジュリヤンは、さらに貴族の世界でのし上がっていくことをも夢見ます。

そして、成り上がるために女性を誘惑していくのですが……。

衝撃的な結末が用意されていて、長編小説ですが、ワクワクしながら読むことができます。もちろん、人間の感情に対する洞察も一流ですので、読み終えた後には「恋愛」をより広く深く捉えることができるようになっているでしょう。

エミリー・ブロンテ『嵐が丘』

嵐が丘

永遠の恋愛小説。待望の新訳成る!
寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。

壮大で、空想的とも言える恋愛小説です。

イギリスのヴィクトリア時代を象徴するかのような小説家三姉妹の次女、エミリー・ブロンテが執筆した大長編です。

純真、残酷、憎悪、嫉妬など、様々な激情がぶつかり合うような、迫力のある作品になっています。

映画化もされていて出来が良いので、「長編を読むのはムリ!」という方は、映画のほうを見てみるのもいいかもしれませんね。

どの登場人物も癖があり、それぞれの感情が複雑に交差していきます。

人物の描写は、イギリス流の見事な皮肉と、著者の人間を見る目の卓越さを伺わせます。

小説として見事な作品である上に、教養ある女性の知性に触れるような読書体験が得られます。

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』

高慢と偏見〈上〉 (岩波文庫)

元気はつらつとした知性をもつエリザベス・ベネットは、大地主で美男子で頭脳抜群のダーシーと知り合うが、その高慢な態度に反感を抱き、やがて美貌の将校ウィッカムに惹かれ、ダーシーへの中傷を信じてしまう。ところが…。ベネット夫人やコリンズ牧師など永遠の喜劇的人物も登場して読者を大いに笑わせ、スリリングな展開で深い感動をよぶ英国恋愛小説の名作。オースティン文学の魅力を満喫できる明快な新訳でおくる。

オースティンが描くイギリス小説の大傑作です。

階級意識が深く人々に染み付いている当時のイギリスが舞台ですが、主人公のエリザベスは、貴族よりは格下のジェントリー階級の産まれです。

しかしエリザベスは、身分の違いを気にせず、元気いっぱいで溌剌に、階級による偏見と戦っていきます。自分の恋を、当事者以外の他の誰にも譲りません。

まるで少女漫画の主人公のようですが、日本の少女漫画のほとんどは知らず知らずのうちにこの小説に大きな影響を受けていると思われます。
ラブコメディの原点にあたる物語ともよく言われています。

女性の心理描写が秀逸なので、女心を勉強したい男性にもおすすめの本です。

D・H・ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』

チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

コンスタンスは炭坑を所有する貴族クリフォード卿と結婚した。しかし夫が戦争で下半身不随となり、夫婦間に性の関係がなくなったため、次第に恐ろしい空虚感にさいなまれるようになる。そしてついに、散歩の途中で出会った森番メラーズと偶然に結ばれてしまう。それは肉体から始まった関係だったが、それゆえ真実の愛となった―。

発売された当時は、倫理に反する、刺激的すぎるという理由で、発禁処分を食らった小説です。

特別に性描写が過激なわけではないのですが、人間の生々しい本質的な恋を描き、当時の保守的な人からすれば我慢ならなかったのでしょう。

センセーショナルなことを抜きにしても、稀代の作家の優れた文学作品です。

階級の離れた人同士の恋愛がどのようなものであったのか、この作品を読めばわかります。

夏目漱石『こころ』

こころ

「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の3部からなる晩年の傑作。親友Kを裏切って好きな女性と結婚した罪を負う先生の行く末には絶望と死しかない。「こころ」というタイトルに包まれた明治の孤独な精神の苦悩には百年たった今も解決の道はなく、読者のこころを惹きつけてやまない。

多くの人が、高校の頃に教科書で読んでことのある作品でしょう。
下手をしたら、森鴎外の『舞姫』と並び、日本で最も知名度の高い小説かもしれません。

大人になってから久しぶりに読み返してみると、昔読んだのとはまた違った印象を抱くと思います。それくらい優れた作品なのです。

百年以上前に書かれた小説ですが、私達が恋愛するときに抱く心情は、まだ漱石の延長にあるのかもしれません。
「今の時代ではこんなことはありえない」と思うと同時に、深い納得と感銘が迫ってくるのです。

AmazonのKindleで無料ダウンロードできるようになっているので、気が向いたらもう一度読んでみるのもいいかもしれませんね。

今においてなお、日本人の意識を形づくっている恋愛小説です。

村上春樹『ノルウェイの森』

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

限りない喪失と再生を描く究極の恋愛小説!
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。

村上春樹自ら、「100パーセントの恋愛小説です」帯のキャッチコピーを書いたベストセラーです。

本当は「100パーセントのリアリズム小説」と言いたかったらしく、複雑な比喩(メタファー)が多用される従来のムラカミ作品と違い、本作はありのままを描写するリアリズムの筆致で書かれています。

賛否両論ある小説ですが、熱狂的なファンを世界中に生み出した恋愛小説であるという事実は、揺らぐことがありません。

今でも、世界中にいるハルキスト達が、新刊が発売されるたびに書店に列を作ります。

ハマる人にはハマる名作です。あなたもハルキ・ムラカミの世界に浸ってみませんか?

フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』

グレート・ギャツビー

豪奢な邸宅に住み、絢爛たる栄華に生きる謎の男ギャツビーの胸の中には、一途に愛情を捧げ、そして失った恋人デイズィを取りもどそうとする異常な執念が育まれていた……。第一次大戦後のニューヨーク郊外を舞台に、狂おしいまでにひたむきな情熱に駆られた男の悲劇的な生涯を描いて、滅びゆくものの美しさと、青春の光と影がただよう憂愁の世界をはなやかに謳いあげる。

アメリカ文学を象徴する大傑作です。
村上春樹も大きな影響を受けたと自分から言っていますね。

男が陥ってしまいがちなストイシズムですが、それがアメリカ的な夢と結びついて、絢爛な壮大さが表現されています。

ギャツビーとまではいかなくとも、ギャツビー的なものを内に秘めている男性は少なくないと思われます。

奢侈の裏側にある荒廃を秘めた人達の描写は、芸術的でもあり、悲痛でもあります。
多くの人が感銘を受けてきた作品であり、短い小説なので、手を出してみるといいと思います。

男が感じる切なさのようなものを知りたい女性にもオススメです。

森鴎外『舞姫』

舞姫

主人公、太田豊太郎はエリート官吏である。彼はドイツ留学中に舞姫エリスと出会い、二人で暮らし始める。しかし、そのことによって周囲から中傷され官職を辞することになる。やがて、豊太郎は、前途を案じる友人からの勧めに応じて、エリスとの別れを決意。事情を知り発狂した身重のエリスを残し、豊太郎は日本へと帰国する。近代文学の代表的なロマンチシズム溢れる作品である。

高校の国語の教科書に載っている作品ですが、国語の先生側からすれば指導に困る内容かもしれませんね。

しかし、文学作品としては珠玉の出来で、堅めの文語なのですが、読んでいるうちにしっかり馴染んでくるのが感じられると思います。

物語のあらすじは、エリートの男が異国で作った愛人を捨て、女は狂ってしまうという酷いものなのですが、そのままをしっかり描写する筆致の美しさに圧倒されてしまいます。

どのような感想を抱くにしろ、恋愛に関する教養の一つだと思うので、もう一度読み返してみるのも悪くないかもしれません。Kindle版は無料で読むことができます。

 

いかがでしたか?

読みたい本はありましたか?

たまには小説の世界に浸ってみるのも文化的で良いものです。現実の恋愛に対する解決策も、ひょっとしたら見つかるかもしれません。

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