性別や年齢などで人を差別しないことを目指す社会において、「男と女は違う」という単純な事実を口にすると、多くの非難や軽蔑を浴びます。
一方で、科学的な調査をすると、男女差は身体のみならず脳の働き方にも明確に見られます。
男と女は違いますが、それはどちらが優秀というわけではなく、単に性別が違うのです。もちろん、男性寄りの女性や、女性寄りの男性、性的少数者などに配慮するならば、「男女は違う」と言ってしまうことには問題があります。
しかし、「男女は違う」と同様に、「男女は同じ」という考え方も危険であり間違っているのです。
男と女は脳の働き方が違う
男女の脳の働きについての研究は、生きたままの脳を安全にスキャンできる技術が確立した80年代から盛んになりました。
それまでは、男女の違いは社会が作るものだという考え方が主流でした。しかし、生まれた時点ですでに男と女とでは思考や行動が違うことが明らかになっていったのです。
私たちの態度や好み、行動に大きな影響を与えるのは、ホルモンや脳の神経回路の働きです。
よって、社会が存在せず、親がいない無人島で育ったとしても、女の子は相手に触れたり抱きしめられたり、友達の輪を広げるのが好きで、男の子は何かを競い合ったり、グループを組織して上下関係を作り上げる確率が高くなります。
女性脳は会話が得意
女性は「会話」が得意で、男性は「会話」が苦手な傾向があります。
男性の脳をMRIでスキャンすると、言葉を話すときに活発になる領域が左脳の少しの部分にしかないことがわかります。また、男性脳には、発話をコントロールする明確な領域がありません。
一方で、女性の場合、話すことは左脳の前部と右脳の小さな領域で行われ、左右の脳の両方を使っているうえに、発話をコントロールする部分が決まっています。そのため、女性はしゃべりながら色んなことを進行できるし、話すことを楽しく思う傾向があります。
外国語の習得が得意な人は女性が多く、文法や句読点の打ち方、綴り方なども女性のほうが成績は良くなりやすいです。
外国語の教師など、言語能力が求められる仕事の男女比は、女性のほうが多いのです。
男性脳は解決にフォーカスしている
男性脳は、機能ごとの区分けがはっきりしていて、情報を分類し、保存する能力に優れています。また、しゃべりながら何かをするといったマルチタスクには向いていません。そのため、男性は課題に直面したとき、発話を制限してじっくり無言で考える傾向があります。
女性は外部とコミュニケーションをとるのに積極的に言葉を使いますが、男性の言語能力はそこまで発達していません。そのため、男性が問題を解決しようとするときは、黙り込んでしまうことが多くなります。
声を出して会話するよりも、自分の中でゆっくり整理して検討したほうが、問題の解決に近づくのです。
また、男性は「会話」ではなく、ストレートに要件を伝えることを好みます。
いくら会話を続けたからといって、問題が解決できるわけではないのです。無口な男性のほうが問題の解決策を見つけるのが得意で仕事ができるというのはよくあります。
しかし、「会話」は問題解決には必ずしも結びつかないものの、人間関係を円滑にする上では非常に重要なことです。
要領を得ない話し方にも重要な役割がある
女性は遠回しに、周りくどい言い方で望んでいることを表現します。男性はそれに気付かないことが多く、「なんで気づいてくれないの!」と関係が悪化してしまいます。
簡潔に要点を指摘できず、要領の得ない話ばかりしていると、ビジネスの場ではあまり有能でないと見做されてしまうことが多くなります。
しかし、婉曲的な話法にはちゃんとした目的があります。あえて核心をずらすことによって、攻撃や対立、不和を避けて、調和を保つことに役立つのです。
女性はそれが得意で、要領を得ない話をすることによって、相手に好意を示します。
女性にとっては、それが意味のない内容であれ、「話すこと」自体が重要であり良いことなのです。そのため、好意を持っている相手に対して女性はたくさん話しかけようとします。逆に、嫌いであることを意思表示するときは、相手を無視しようとする傾向があります。
男性脳は空間能力に優れる
「空間能力」という、対象物の形や大きさ、空間に占める割合、動き、配置などを思い浮かべる力は、男性脳のほうが優位な傾向があります。男性の脳には空間能力をつかさどる部分がたくさんあります。
男性は女性に比べて、対象物を頭の中で回転させたり、立体的にものを眺めるといったことが得意です。
アイオワ州立大学のカミラ・ベンボウ博士は、1000万人以上の少年少女の脳をスキャンして空間能力を調べました。すると、男女差は4歳の時点ですでに顕著に見られるようになり、男子のほうが空間能力は優れている傾向がありました。
現在の仕事に照らし合わせても、建築士、エンジニア、会計士、航空管制官、パイロットなど、空間能力が必要な仕事は男性の比率が多くなっています。
統計的に見れば男女には明らかに違いがある
以上まで述べてきたことは、しっかり科学的に研究され実証されてきたことです。
男女の身体的な違いを考えれば、脳の機能に違いがあってもそれほど驚くことではないかもしれません。
もちろん、女性より婉曲な会話を好む男性や、男性より空間能力に優れている女性も存在します。しかし、男性より走るのが早い女性がいるからといってスポーツにおける男女の区別を無くすべきでないように、統計的な差を無視してはいけません。
統計的には男女には明らかな違いがあり、それは認めた上で、お互いにとって良い社会を追求していくべきでしょう。
例えば、何かを競い合うといったことは、明らかに男性が優位に立ちやすい領域です。競い合って勝つことが素晴らしいというのは男性的な価値観であり、そこに追従しようとする女性は不利になりやすいのです。
「男女は違う」と同様に、「男女は同じ」も間違い
「男と女は全く別のものだ」という考え方は、過去に(あるいは現在進行系で)多くの男女差別や権利侵害を産んできたという経緯があります。
そのため、身体や脳の構造に違いが見られたからといって、男と女は別の仕事をするべきだという考え方は間違っています。
しかし、「男女は同じ」という考え方もまた間違っています。共通の権利を認めるべきであるのと同様に、好むことや得意なことに違いがあることを認めるべきなのです。
男性には女性にできないことができるし、女性には男性にできないことができます。異性にしかできないことを尊重し合うことによって、お互いの短所を補い、良い部分を伸ばして世の中が発展していくのです。
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